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お手本は、生き物?生物規範型ロボット

中村太郎氏 -中央大学 理工学部 准教授-
掲載号:『someone』2008秋冬号
 「長い年月をかけて進化してきた生き物は優れた機能を持っているはず」。そんな考えから生まれた,「生物規範型ロボット」。それも特別な生き物ではなく,どこにでもいる身近なものの動きをお手本にしたロボットだ。



















生き物に学ぶ
 秋田の大学で助手をやっていた頃,田んぼでよく見かけていたミミズやカタツムリ,アメンボ。「ありふれた生き物ですが,どんな動きをしているのだろうと思ってよく観察してみると,おもしろくて」。
 同じような細長いからだをしているのに,ヘビの動きとはまったく違うミミズの動きに,中村さんは注目した。すると,くねくねからだを動かしながら前に進むヘビに対し,ミミズは伸びたり縮んだりを繰り返す「蠕ぜんどう動運動」と呼ばれる独特な
動きをしていることがわかった。ミミズは,体節をひとつずつ順に伸び縮みさせることで,からだの一部分を太くしたり,細くしたりしている。この動きを頭からお尻へ波のように伝え,前へ進むことができるのだ。この運動をまねするロボットをつくれば,移動するのに必要な空間が小さくてすむため,地中やヒトの血管の中など,細い隙間を進むことができる。
 他にも,カタツムリの動きをまねすれば,前,後ろ,右,左,斜め,すべての方向に移動できるし,壁や天井でもはりつけるはず。アメンボなら,水陸どちらでも素早く動き,方向転換ができるので,水陸両用ロボットをつくれるはずだ。生き物をまねしたロボットのアイディアは底をつきそうにない。

つくった者にしか味わえない感動
 そんな研究をしている中村さんは小学校時代,先生によく怒られるほど,とてもわんぱくな少年だった。「自習時間に騒いでいると,日直に名前を書かれたりして。さらに僕の名前のところにだけ三重丸がしてあったり」。それでも,ひとつだけ学校の先生にほめられたのが,ものづくりだった。ものをつくることが好きで,長点・短点の2種類の符号で文字通信をするモールス発信機などをつくっては先生のところに持っていき,アドバイスをもらっていた。中学・高校では社会や英語などの文系科目のほうがずっと得意だったが,自分のことをほめてくれ,「お前は絶対に理系にいけ!」といってくれた先生に顔を見せることができないと思い,何とか理系の道に残っていた。それが変わったのは,大学4 年生のとき。自分で試行錯誤して設計したロボットが初めて思い通りに動いたときの感動が,小学生の頃の気持ちを思い出させた。「これが学問のおもしろさだ,と気づいたのです」。いつのまにか,研究にのめりこんでいた。

生物規範型ロボットが活躍する未来
 近年,ヒューマノイドのような人間と共存していくためのロボットが多く開発されているが,中村さんは人間のできないことこそロボットにさせたい,と考えている。「人間がまったく行けないところへ入り込んでいくロボットがあってもいいと思うのです」。それに最も適しているのが,それぞれの環境に適応して進化してきた生き物をまねしたロボットなのだ。
 ミミズロボットは,今やその狭い場所を移動できる性質によって,月の地中探査に利用されようとしている。アメンボロボットは水難救助を目指している。中村さんが次にまねしようとしているのは,なんとゾウの鼻。生物規範型ロボットがいたるところで当たり前になる未来を夢見て,研究を続けている。(文・周藤瞳美)



中村太郎(なかむら たろう)プロフィール
1975 年生まれ。信州大学大学院工学系研究科修了,博士(工学)取得。1999 年秋田県立大学助手,2004 年中央大学理工学部専任講師,2006 年同大学助教授を経て,2007 年より現職。

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