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現実を見据え、活躍する人材を育てる

西尾 健氏 -法政大学 生命科学部 教授-
掲載号:『someone』2008秋冬号
 自分の専門分野だけでなく幅広い視野を持つことで,技術者はもっと活躍できる。そういい切る西尾さんは今,生物学から政治まで総合的な知識を持つ人材を育て,地球の食糧問題を解決しようとしている。


植物も病気になる
 もし病気にかかったら,多くの人はまず病院に行き,医師に診察してもらうだろう。そして,自分の病気の正体がわかったら,それにあった薬を処方してもらう。
 病気は人間だけではなく,植物にも起こる。たとえば,葉の表面に白い粉のようなものが付いていることがある。手でこすっても落ちないそれは粉でもゴミでもなく,植物に寄生する病原菌だ。見た目がうどん粉に似ていることから「うどんこ病」と呼ばれる。この病気に感染すると,光合成が妨げられるとともに葉から栄養を吸収され,ついには枯れてしまう。

幅広い知識を持つ植物医を育てる
 これまで,植物の病気の診断方法を開発してきた。植物の病気の原因となるのも他の生き物と同じ,カビや細菌,ウイルスだ。診断するのに一番基本的な方法は,カビや細菌の形態から原因を判断するというもの。それでわからない場合は,遺伝子やタンパク質を調べる。西尾さんが開発してきたのは,なかでもタンパク質からウイルスの種類を調べる方法だ。
 しかし自然科学分野の研究だけを続けてきたわけではない。農林水産政策研究所では,政治や経済分野の仕事にも携わってきた。そんな人生を歩んだからこそ,全体を見ることの大切さに気づいた。
 世界の飢餓人口は約8 億人といわれ,近年この数は減っていない。これは技術の問題だけでなく,分配の問題だと西尾さんはいう。食べ物に困る国がある一方で,日本のように食べ残しを山ほど出す国もある。その偏りの大きな原因は政治や経済。科学技術の力で飢餓をなくそうとする努力は絶対に必要なことだが,それだけでは不十分なのだ。
 現実の問題を解決するには,自分の専門分野以外にも幅広い知識を持つ必要がある。西尾さんが所属する植物医科学専修では,植物病理学や現場で役立つ診断技術,ビジネス,法律などさまざまなことを学べる。幅広い知識を持ち,将来本当に社会で活躍する植物医師を育てるための場をつくるのが,西尾さんの使命だ。
(文・観愛美)


西尾健(にしお たけし)プロフィール
横浜植物防疫所病菌課長,環境庁土壌農薬課長,農林水産技術会議事務局研究総務官,農林水産政策研究所長を経て,2008 年より現職。

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